野分:でも、俺は言いたいです。
弘樹:そんなの俺にだけ言ってればいいんだよ!お…
野分:ヒロさん。
弘樹:今の無し!抱きつくな!離れろ!つうかお前、やっぱり実家に来るな!
野分:ダメですか。おとなしくしてます。
弘樹:お前はでかいから、何もしてなくても目立つんだよ。
野分:ヒロさん。
(弘樹:あ、もう、またしょぼくれた顔するし。ったく、こいつはどうしょうもないな。そんでもって、俺はどうしてこいつのこういう顔に弱いんだ。)
弘樹:何でそんなに来たいんだよ。
野分:知りたいです。ヒロさんのこと全部。
弘樹:十分知ってるじゃないか。
野分:もっと知りたいです。俺の知らないヒロさんのことも全部。
弘樹:お…
野分:あ、ご実家に伺うのがダメなら、俺の知らないヒロさんの子供のごろの話とか、ご家族のことだけでも聞かせてくれませんか。
弘樹:そんなもん聞いてどうすんだよ。
野分:ヒロさんのこと知りたいです。すみません。これは俺のわがままです。
(弘樹:そんな風に言われたら、いやだなんて言えるわけねえじゃないか。結局、俺はこいつにのせられてる気がする。)
弘樹:はあ…俺の子供のごろのことなんか知ったって、何も面白くないぞ。毎日毎日習いことばっかだったし、それがいやで泣いてばかりいたし。
野分:何習われてたんすか?
弘樹:半分は意地みたいだもんだ。親はきついならやめろって言ってたけど、途中でやめたら、自分に負けるような気がしてさ。やめるにやめられなくなって、結局ずるずるとって感じだな。それに、ひとつレベルアップすると、さらに上を目指したくなってみたりして、どつぼにはまっていたというか。
野分:ハハ…子供のごろから負けず嫌いだったんですね。
弘樹:なんだよそれ。で、こんな話聞いたって、面白くないだろう。
野分:そんなことないです。もっと聞きたいです。好きな教科はやっぱり国語だったんですか?
弘樹:まあなあ。
野分:じゃ、嫌いな教科は?
弘樹:ええと、で、俺ばかりに何言わせたんだよ。でめえも話せ。
野分:いいですよ。何が聞きたいですか?
弘樹:え、あ、いや、急に言われたって、答えられるわけないだろう。考えとく。
野分:はい。あ、すみませんでした。お仕事の邪魔してしまって。採点はまだ続けますよね。俺コーヒーでも入れてきます。
弘樹:悪いな。
野分:いいえ、ヒロさんはお仕事頑張ってください。
(弘樹:はあ…あいつ明らかに落ち込んでたよな。そんなに実家に行きたかったのか。いや、別に実家に連れてだって、ちゃんと口止めしておけば、変なことは言わないと思うし。親だって俺たちの関係気づくとは思わないけど。あ、もう、仕方ないな。)
弘樹:野分。
野分:はい。
弘樹:先みたいな変なこと言わなければ、別に実家に来てもいいぞ。
野分:え、あ、でもいいです。ヒロさんの迷惑…
弘樹:俺がいいって言ったらいいんだよ。
野分:え、そんなこと言ったら、俺本当に行きますよ。
弘樹:お、ロクな家じゃないけどな。来るならきやがれ。でも、絶対に「息子さんをください。」とか言うなよ。言ったらそこで分かれるからな!
野分:分かりました。そうだ、ヒロさんも今度俺が育った草間園に来てくださいね。俺のことも知ってほしいです。
弘樹:え。
(弘樹:知ってほしいって。)
野分:どうかしましたか?
弘樹:なんでもない。
(弘樹:分かってんのか。今まで自分のことほとんど話せなかったお前は俺にそんなこと言うのが始めてだということ。)
野分:なんかドキドキしますね。ハハ。
(弘樹:そして、それだけのことがどんなに俺を喜ばせるということ。)
野分:でもヒロさんなら、「息子さんを俺にください。」って園長先生に言ってくださっても、俺は構いませんから。
弘樹:だ…だれが言うか!ボケ!この!
野分:ヒロさん、蹴らないでください。
弘樹:お前が悪いだろうが。俺は謝らないぞ。お前が変なこと言うのが悪い。
野分:だけど俺…
弘樹:うるせー!もうしゃべるな!
野分:でも…
弘樹:この!
野分:ヒロさん…
弘樹:野分、黙れ!
野分:痛っ!痛いです、ヒロさん。
(end)
*純情ミニマム ドラマCD収録
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