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上条弘樹x草間野分

弘樹:はあ…
野分:あれ、ヒロさん、どうしたんですか、テストの答案を見て、ため息なんかついて?
弘樹:見ろよ、こいつの答案。答えが一個ずつズレたんだ。そのせいで5点だぞ、100点中。こんな古典的なやつ、今まで見たことないぞ。ったく、どうしょうもねえな、最近のガキは。
野分:あ、これは、すごいですね。再試験はあるんですか?
弘樹:ああ、一応な。こいつだけじゃないんだが、こいつが一番ひどい。
野分:解答欄が二問目から間違ってるんじゃ仕方ないですよ。でも、大学の助教授って大変ですね。平日にも自宅に仕事を持ち帰ってこなきゃならないなんて。
弘樹:別に。お前だって大変なのは同じだろう。研修医じゃ、こき使われてるんだろうし。
野分:でも、俺は家にまで仕事を持って帰ることはほとんどありませんから。
弘樹:その代わり、お前は土日ほとんど休めないんじゃ。俺は一応土日は休みのわけだしさぁ。
野分:まあ、そうですけど。
弘樹:とはいえ、俺も今週末は再試験用の問題作りだろうなあ。
野分:今週末ですか?
弘樹:おお。
野分:ああ…そうなんですか。
弘樹:お、野分、どうした?
野分:いいえ、あの、ヒロさん、日曜日もその仕事お忙しいですか?
弘樹:日曜日?おお、日曜日は仕事じゃなくて、実家に呼び出しくらてる。
野分:そうなんですか。
弘樹:なに?なにかあるのか?
野分:ええと、あの俺、日曜日久しぶりに休みになったんで、外で食事でも一緒にどうかなと思ったんですが。
弘樹:ん?
野分:でも、いいです。またの機会にでも。
(弘樹:もしかして、こいつ落ち込んでるのか?そんなに俺と出かけたかったとか。)
弘樹:ああ…でも…あ、いや。どうせろくな用事じゃないし、終わったらどこかで待ち合わせでもするか?
野分:いいえ、大丈夫です。せっかくご実家に帰られるんだし、俺のことは気にしないでください。
弘樹:いいよ、別に平気だし。
(弘樹:野分と休みが合うなんて久しぶりだもんな。実家の用事なんて、大したことないだろうし、外で飯食うぐらいなら。)
弘樹:あ、そうだ。だったら、お前も来るか。そうや、親も同居相手見てみたいっていつだったか言ってたしさ。
野分:え?本当ですか?本当にヒロさんのご実家に伺えるんですか?
弘樹:ん…何がそんなにうれしいんだ。たかが実家だぞ。
野分:うれしいに決まってます!だって、実家に呼ばれるということは、ご両親にご挨拶させていただけるということですよね。
弘樹:まあ…そうだな。
野分:あ、すみません。俺、ちゃんとした服が持ってないんですが。
弘樹:別に普通の格好でいいだろう。
野分:そうですか。でも、さすがに緊張します。
弘樹:は?
(弘樹:こいつ、たかが実家行くぐらいで何がこんなにうかれたんだ。)
野分:ヒロさん。
弘樹:なんだよ。
野分:あの、こんなことヒロさんに確認とるのもなんですが、やっぱり、ありきたりですけど、こういう場合って普通、「息子さん俺にください」でいいんでしょうか?
弘樹:(打つ)
野分:痛っ!
弘樹:なんじゃそれは!?
野分:だって、ご両親にご挨拶ですよね。
弘樹:バカかお前は!その挨拶じゃねえ!
野分:え?あ、そうなんですか。すみません。あ、じゃあ、「息子さんを一生幸せにします」とか?
弘樹:違う!何考えてるお前!結婚の挨拶じゃなくて、で、結婚!?
(弘樹:な…なんだそれは…結婚って…俺と野分が?アホか!ありえないだろう、そんなこと。第一、世間が許さないだろうが。)
弘樹:っつうか、男同士で紹介も何もねえだろうが。常識考えろ!そんなこと言っていいわけねえだろう!

野分:でも、俺は言いたいです。
弘樹:そんなの俺にだけ言ってればいいんだよ!お…
野分:ヒロさん。
弘樹:今の無し!抱きつくな!離れろ!つうかお前、やっぱり実家に来るな!
野分:ダメですか。おとなしくしてます。
弘樹:お前はでかいから、何もしてなくても目立つんだよ。
野分:ヒロさん。
(弘樹:あ、もう、またしょぼくれた顔するし。ったく、こいつはどうしょうもないな。そんでもって、俺はどうしてこいつのこういう顔に弱いんだ。)
弘樹:何でそんなに来たいんだよ。
野分:知りたいです。ヒロさんのこと全部。
弘樹:十分知ってるじゃないか。
野分:もっと知りたいです。俺の知らないヒロさんのことも全部。
弘樹:お…
野分:あ、ご実家に伺うのがダメなら、俺の知らないヒロさんの子供のごろの話とか、ご家族のことだけでも聞かせてくれませんか。
弘樹:そんなもん聞いてどうすんだよ。
野分:ヒロさんのこと知りたいです。すみません。これは俺のわがままです。
(弘樹:そんな風に言われたら、いやだなんて言えるわけねえじゃないか。結局、俺はこいつにのせられてる気がする。)
弘樹:はあ…俺の子供のごろのことなんか知ったって、何も面白くないぞ。毎日毎日習いことばっかだったし、それがいやで泣いてばかりいたし。
野分:何習われてたんすか?
弘樹:半分は意地みたいだもんだ。親はきついならやめろって言ってたけど、途中でやめたら、自分に負けるような気がしてさ。やめるにやめられなくなって、結局ずるずるとって感じだな。それに、ひとつレベルアップすると、さらに上を目指したくなってみたりして、どつぼにはまっていたというか。
野分:ハハ…子供のごろから負けず嫌いだったんですね。
弘樹:なんだよそれ。で、こんな話聞いたって、面白くないだろう。
野分:そんなことないです。もっと聞きたいです。好きな教科はやっぱり国語だったんですか?
弘樹:まあなあ。
野分:じゃ、嫌いな教科は?
弘樹:ええと、で、俺ばかりに何言わせたんだよ。でめえも話せ。
野分:いいですよ。何が聞きたいですか?
弘樹:え、あ、いや、急に言われたって、答えられるわけないだろう。考えとく。
野分:はい。あ、すみませんでした。お仕事の邪魔してしまって。採点はまだ続けますよね。俺コーヒーでも入れてきます。
弘樹:悪いな。
野分:いいえ、ヒロさんはお仕事頑張ってください。
(弘樹:はあ…あいつ明らかに落ち込んでたよな。そんなに実家に行きたかったのか。いや、別に実家に連れてだって、ちゃんと口止めしておけば、変なことは言わないと思うし。親だって俺たちの関係気づくとは思わないけど。あ、もう、仕方ないな。)
弘樹:野分。
野分:はい。
弘樹:先みたいな変なこと言わなければ、別に実家に来てもいいぞ。
野分:え、あ、でもいいです。ヒロさんの迷惑…
弘樹:俺がいいって言ったらいいんだよ。
野分:え、そんなこと言ったら、俺本当に行きますよ。
弘樹:お、ロクな家じゃないけどな。来るならきやがれ。でも、絶対に「息子さんをください。」とか言うなよ。言ったらそこで分かれるからな!
野分:分かりました。そうだ、ヒロさんも今度俺が育った草間園に来てくださいね。俺のことも知ってほしいです。
弘樹:え。
(弘樹:知ってほしいって。)
野分:どうかしましたか?
弘樹:なんでもない。
(弘樹:分かってんのか。今まで自分のことほとんど話せなかったお前は俺にそんなこと言うのが始めてだということ。)
野分:なんかドキドキしますね。ハハ。
(弘樹:そして、それだけのことがどんなに俺を喜ばせるということ。)
野分:でもヒロさんなら、「息子さんを俺にください。」って園長先生に言ってくださっても、俺は構いませんから。
弘樹:だ…だれが言うか!ボケ!この!
野分:ヒロさん、蹴らないでください。
弘樹:お前が悪いだろうが。俺は謝らないぞ。お前が変なこと言うのが悪い。
野分:だけど俺…
弘樹:うるせー!もうしゃべるな!
野分:でも…
弘樹:この!
野分:ヒロさん…
弘樹:野分、黙れ!
野分:痛っ!痛いです、ヒロさん。

(end)

*純情ミニマム ドラマCD収録

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